産後疲労

産後疲労

産後疲労生まれたばかりの赤ちゃんは24時間体制で世話をする必要があります。出産で消耗した体力が完全には回復していない状態で、まとまった睡眠時間をなかなかとれずに慣れない育児で懸命になっていると、お母さんが自分の体調変化に気付くのが遅れて状態が悪化してしまうことがあります。疲れやしんどさ、だるさは心身が休息を必要としている重要なサインです。こうしたサインや、赤ちゃんの世話がうまくできないなどのお悩みがありましたら、気軽に当院までご相談下さい。少しでも赤ちゃんとお母さんが元気に楽しく毎日を送れるよう、当院では親身にサポートしています。

当クリニックでは、お子さん連れでも来院できるよう、キッズスペースやおむつ替えスペースを設けております。また、助産師もおりますので、授乳トラブルや乳腺炎の相談も可能です。

子育てで忙しく疲労が重なると、来院することも大変になるかと思われます。当クリニックでは、助産師といつでもオンラインで育児相談ができる会社様 (株式会社ジョサンシーズ)と提携しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

産後の身体変化

ホルモンバランスの急激な変化

出産を境に、ホルモンバランスは急激に大きな変化を起こします。こうした変化で自律神経のバランスも崩れやすくなり、様々な心身の不調を起こしやすくなります。

生活リズムや環境の変化

まとまった睡眠時間がとれず、生活リズムが乱れて疲れやすくなり、ストレスもたまります。

親としての責任感

赤ちゃんを守るために責任感や緊張感が強くなります。それ自体は素晴らしいことですが、プレッシャーが強くなりすぎると大きなストレスになります。

産後のだるさ・疲れの原因

頻繁なおむつ交換や授乳による睡眠不足

頻繁なおむつ交換や授乳による睡眠不足生まれたばかりの赤ちゃんは2~3時間おきに起きて泣き、母乳やミルク、おむつ交換を訴えます。それに対応するためにまとまった睡眠時間をとれず、少し寝ては起きるというサイクルを繰り返すことになり、慢性的な睡眠不足になります。睡眠は、脳を休めたり、心身を回復させたり、自律神経を整えたりといった重要な役割を担っていますが、睡眠時間が短く分断されてしまうとこうした作用の効果を得られず、疲労が蓄積して自律神経のバランスが乱れ、様々な不調が起こりやすくなります。

産後特有のホルモンバランスの変化

妊娠するとホルモンバランスは大幅に変化しますが、出産後も身体を元の状態に戻すためにホルモンバランスが大幅に変化を起こします。この変化は出産後、最初の生理を迎える頃に落ち着いてきますが、バランスが戻るまでの期間には個人差があります。ホルモンバランスの変化は自律神経のバランスを乱し、めまい・立ちくらみ、頭痛・肩こり、だるさなどの症状を起こしやすくなります。また、イライラや不安、抑うつなどの精神的な症状を起こすことがあります。

鉄分の不足などによる貧血

出産時の出血量が多い場合や、産後の育児で忙しく栄養バランスがとれた食事ができないと、鉄分や葉酸などが不足しやすくなります。実際に、産後、貧血になるお母さんは少なくありません。鉄分が不足すると貧血を起こし、だるさ、めまい・立ちくらみ、動悸、息切れ、頻脈といった症状を起こし、育児に支障を及ぼすこともあります。軽い貧血ではだるさ程度の症状しか起こらず、見逃されて悪化するケースが珍しくないので、だるさが続く場合には受診して貧血の有無を確かめることが重要です。

頻回な授乳

母乳で授乳している場合、出産直後にはお母さんが2~3時間おきに授乳する必要があります。授乳はお母さんにとって幸せな瞬間ですが、母乳はお母さんの血液からつくられていますので、お母さんの身体への大きな負担であり体力を消耗させます。また、授乳により鉄分が不足し、貧血の原因にもなります。赤ちゃんの健やかな成長のためには、お母さん自身の心身を丁寧にケアすることも重要です。

全身のこり

赤ちゃんは生まれたばかりでも3㎏程度あり、どんどん体重は増えていきます。同じ重さの荷物を持つよりも赤ちゃんの抱っこでは筋肉や気持ちが強く緊張します。育児では抱っこして過ごすことが多く、同じ筋肉を酷使したり、普段の生活では使っていなかった筋肉を使ったりすることで、肩や腰をはじめ、手首などの様々な部位にこりを生じます。外出では赤ちゃんを抱いた上で、赤ちゃんのケアグッズが入った荷物を持ち、買い物した荷物もそれに加わって、全身の筋肉に大きな負荷がかかります。こうした生活によって慢性的なこりがあると血流が悪化し、痛みがさらに強くなります。また、血行の悪化によって頭痛やめまい、消化器の不調なども起こりやすくなります。

パートナーへのイライラ

赤ちゃんの世話は24時間体制で休みがなく、幸せな瞬間も多い反面、心身へ大きなストレスがかかります。慢性的な睡眠不足や頻回の授乳、夜泣きの対応などによる疲れやストレスがたまっている時には、ある程度協力的なパートナーの言葉であってもイライラしてしまうことがあります。まして協力的ではない、話を聞いてくれないといったパートナーの行動があれば、それがさらに大きなストレスとなります。育児の疲れに加え、パートナーからのストレスで疲れが余計に強くなってしまうことがあります。

マタニティブルーズと産後うつ

出産から数日後という期間に生じる気分の軽い変動は、マタニティブルーズ (マタニティブルー)と呼ばれています。感情がクルクル変わる、なんでもないことで涙が出る、理由なく落ち込む、疲れやすいといった症状を起こすことが多いのですが、正常な反応であり、ほとんどの場合は短期間におさまります。ただし、マタニティブルーズがおさまる頃、産後うつになるケースがあり注意が必要です。産後うつの発症は出産後1~2週間から数ヶ月の間とされ、だるさなどの身体症状がきっかけとなって気付くこともあります。疲れがとれない、だるいといった症状が続く場合にはお気軽にご相談下さい。

赤ちゃんとお母さんの健康のために

産後健診を必ず受診して下さい

赤ちゃんとお母さんの健康状態を確認する産後健診は、一般的に出産後退院してから約1ヶ月経過した頃に受けて頂きますが、最近ではメンタルヘルスの観点から、産後2週間後に受診頂く場合もあります。慣れない育児で不安やプレッシャーが大きい場合は、早めに産後健診を受けることが有効です。

産後健診では、赤ちゃんの体重測定など発育の確認、授乳・育児状況などの確認を行い、お母さんの血液検査・尿検査、母乳の出方、内診による子宮や腟の回復状態の確認などを行っています。貧血が疑われる場合には貧血の有無も確かめます。
産後健診は、赤ちゃんの状態を確かめるためにも重要ですが、妊娠・出産で消耗したお母さんの心身を回復させるためにも不可欠です。なお、基本的に産後健診は自費診療ですが、自治体により産後健診への助成が受けられたり、出産費用の一部に含まれていたりする場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
また産後健診だけでなく、産後の過ごし方に関するお悩みや不安がありましたら、お気軽にご相談下さい。

このような症状がある場合は速やかな受診が必要です

栄養バランスのよい食事で回復力アップ

出産で大きなダメージを受けた身体を回復させるためには栄養バランスがとれた食事が不可欠です。出産後は、授乳の関係もあり、鉄分、ビタミン、タンパク質などが不足しやすい時期です。こうした栄養を積極的にとり、それ以外の栄養もバランスよくとるようにして下さい。アルコール、カフェインなど刺激の強いものを避け、脂肪や糖のとりすぎにも注意しましょう。

栄養素 食物の例 働き
鉄分 レバー・かつお・ひじき・小松菜など 出産で失った血液や授乳に不可欠な血液をつくるために必須の栄養素です。
ビタミンC 柑橘類・緑黄色野菜など 鉄分の吸収をサポートします。また、自律神経のバランスを整える効果も期待できます。
ビタミンB12 ほたて・レバー・魚介類・チーズなど 赤血球の形成に関与します。産後の貧血対策や授乳に欠かせない栄養素です。
タンパク質 肉類・魚類・卵・大豆など 筋肉のもとであり、出産でダメージを受けた骨盤底筋をはじめとした全身の筋肉の回復に不可欠です。
カルシウム 牛乳・干しエビ・水菜・木綿豆腐など 母乳を与えることで不足しやすく、積極的な摂取が重要になる栄養素です。
葉酸 春菊・納豆・緑黄色野菜など 赤血球の形成に関与します。産後の貧血対策や授乳に欠かせないビタミンです。

お気軽にご相談下さい

出産後めまぐるしいほど忙しくなるお母さん

妊娠中に待ち焦がれた赤ちゃんとの暮らしは、大きな喜びを感じる瞬間に溢れていますが、お母さんの心身に大きな負担がかかる時期でもあります。2~3時間おきの授乳、頻繁なおむつ交換、夜泣きなどで24時間忙しく、短時間の睡眠を途切れ途切れにとるのが精一杯です。大事な赤ちゃんの命を育むというプレッシャーもあり、初めての育児では戸惑いや不安も次々に生じます。
こうしたストレスに加え、出産後にはホルモンバランスが急激に変化して、イライラ、落ち込み、疲れやすい、不眠、ほてりや冷え、発汗や寝汗など、更年期障害のような心身の不調を起こすこともあります。

つらさを抱え込まず、ご相談下さい

マタニティブルーズは、出産後のお母さんの30~50%が経験しているとされているほどよくある症状であり、ほとんどは一過性で次第に落ち着きます。症状の内容や強さには個人差がありますが、とてもつらい症状に不安が強くなってしまうこともあります。赤ちゃんを育てるためには、お母さんの心身が健康であることがとても重要です。気持ちの落ち込みなどつらい症状がある時には我慢せず、パートナーや家族、友達などに話を聞いてもらいましょう。なお、赤ちゃんの夜泣きやかんしゃくがある場合は、赤ちゃんとお母さんで一緒に抑肝散などの漢方薬を服用することで改善できることがあります。また、赤ちゃんの夜泣きのために睡眠が浅く、熟眠できないお母さんには酸棗仁湯や加味帰脾湯などが有効なことがあります。当院では、幅広い産後のお悩みについて相談を承っており、どんな些細なことにも親身にお答えしています。つらいと感じることがありましたら、お気軽にご相談下さい。

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